著:ヴィスワヴァ・シンボルスカ 訳・解説:沼野充義 版元:未知谷 P128 四六判ハードカバー 1997年5月刊
まだ戦争が現実的なものとして近くにあった時代、シンボルスカは社会主義体制下のポーランドを、強く、繊細さを失わずに生き抜いた。そのことばには、世界に楔を打ち込む力強さがあった。
彼女は詩人らしく、自らが愛する日常を、それにふさわしい「いい言葉」を選んで書いた。しかし時代と政治体制が違えば、意図しなくても、「いい言葉」自体が政治性を帯びてしまう。それでも彼女はあきらめず、「よりよいことを選択しながら生きて行く可能性」にかけ続けたのだ。
【内容】 *版元サイトより
個を超えた〈普遍〉には与せず、誰にでも分かる平明さで、静かに個として個に語りかける詩人。好きといっても/人はお世辞や水色も好きだし/――清々しい簡潔さで、日常の平凡な世界に価値を見出す最新詩集。ノーベル文学賞記念講演を併録。
空
題はなくてもいい
詩の好きな人もいる
終わりと始まり
憎しみ
現実が要求する
現実
決算のエレジー
空っぽなアパートの猫
眺めとの別れ
手品ショー
一目惚れ
一九七三年五月一六日
ひょっとしたらこれはすべて
どたばた喜劇
もらい物は何もない
様々な出来事の一つの解釈
なんという幸せ
ノーベル文学賞記念講演
解説 普遍のユートピアに抗して