著:町田康 版元:COTOGOTOBOOKS P192 四六判ハードカバー 2024年3月刊
これが著者初歌集、出版社初の本ということにまず驚かされる。自虐、諧謔、おどろしい語彙に突然やってくる脱力。俗を徘徊し、聖に突き抜けるような町田さんの世界が、短歌だと凝縮されるのだなあ。紙の本の力を感じさせる一冊。
【内容】 *版元サイトより
著者初の短歌集にして、全首書き下ろしとなる本作は、町田さんがとらえた世界を聖賤一体となった言葉で味わえる一冊。
戀人を山に埋めて音樂は四日前から村に漂ふ
花活けて横に巻き寿司現代詩捨ててしまつた夢の置き床
突き指が趣味だと言うたあのひともいまは入間でゴミを食べてる
気い狂てアキレス腱をわがで切り這うて行こかな君の近傍
阿呆ン陀羅しばきあげんど歌詠むなおどれは家でうどん食うとけ
迷惑か? 俺は男だマンナくれ夏場体調崩すかもです
352首の調べとスピードに必死でしがみつきながら読んだ後に残るのは、これまでとは少し、しかし確実に違って見える世界と自分自身。笑いにひっぱられて油断していると、とんでもないところに引きずり込まれてしまいます。
町田さんの言葉を受け、本をデザインしてくださったのはサトウサンカイ・佐藤亜沙美さん。
うねりのなかから浮き上がり、いまにも暴れ狂いだしそうな言葉たちをねじ伏せる大迫力のタイトル。
それらを箔のみで表現し、さらには、三方を小口染めすることで、モノとしての強度を高め、ただそこに置かれているだけで異様な狂気を放つ一冊に仕上げてくださいました。