著:堀静香 版元:左右社 P176 B6判ソフトカバー 2024年6月刊
早朝の光のなかにクイックルワイパーすっと立ってりりしい
ふと、小さなものに目をとめ、そこにあるひかりをうたう。すっと入ってくるが、実在のある、やわらかい感触がほかにない。薄いパラフィン紙に包まれた、ながめのよい歌集。栞も素敵。
【内容】 *版元サイトより
自転車で走っているときに感じた風。どこかで聴いたみじかい曲。暮らしのなかにさりげなく、しかし唐突にあらわれる一瞬をさまざまにとらえた第一歌集。
栞:服部真里子/堂園昌彦/大森静佳
〈収録短歌から〉
どこへでもゆける身体を持っている ひとつだけ 風のぬくいはきだめ
朝ドラの明るい曲を口ずさむ 登場人物の少ない暮らし
目に見えるすべてを信じてからめとる従順なクイックルワイパーは
ずっと一緒にいると決めてもいいのだろうか大型トラックのんびり走る
オレンジのブラインドがみな降ろされて炎のなかのコメダ珈琲
きみが生まれて生きることだけ考えて 最後はおだやかに終わる曲
いい人と結婚したねと言われてもへんな真顔をつらぬき通す
骨だけがこの世に残るおかしさの掃き出し窓をあふれくる風
引き出物の写真立てにはシンプルな英字の「home」入れてたまるかhomeな写真
天国へゆくことだけをこの世のめあてのように鳩の首のきらめきは
【目次】
ハイツやハイム
くす玉
やわらかい月
四角を磨く
スローモーション
抱擁と天丼
夜間係留
あたらしいメロディ
ちからうどん
喃語になって
あふれくる風
うつくしい皿
丸文字
滴るほうを
風紋
とどかないから
みじかい曲
首だけをきらめかせて
あとがき
栞
服部真里子「いとおしいクイックルワイパー」
堂園昌彦「よく立ち止まる人に風」
大森静佳「永遠の考えごと」