


著:スズキナオ 版元:太田出版 P340 四六変形判ソフトカバー 2024年7月刊
いつも電車で通り過ぎてしまうような、知っているようで知らない街にワンダーはある。地図を細かく埋めるように歩けば、自分なりの居心地のよい場所、よい店が見つかって、そこに味わうようにいることが幸せだ。はじめての旅エッセイ集。
【内容】 *版元サイトより
執着を解き放ち、自分の輪郭を失くしながら歩く知らない町。人に出会い、話を聞く。言葉に出会い、考える。それでもこの世界をもう少し見てみたいと思う小さな旅の記録。
話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』でデビューし、今「最も注目すべき」書き手であるスズキナオ、初の旅エッセイ集。前向きな言葉、大きな声に疲れているすべての人へ。
今の疲れ果てた自分でも読めるような、むしろ、こんなときだから読みたくなるような本はないものだろうか……書棚をもっとよく探せば見つかったのだろうけど、そのときは体力もなく、まばゆく見える本ばかりが並ぶ書店をよろよろと出ての帰り道、暗くて静かな旅行記を書こう、と心に決めたのだった。大好きな『つげ義春日記』の、あの雰囲気が念頭にあった。(中略)旅先で出会う何かに心が癒されるとか、元気になるとか、そんな自分勝手なことを期待しているわけではなく、知らない土地を歩くことで、そのあいだだけは、自分自身のことを考えずに済むのかもしれない。ただ、見ているだけ、聞いているだけ、歩いているだけの存在になれるような気がするのだ。そしてその行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。(「まえがき」より)
【目次】
まえがき
Ⅰ よく知っている町の知らない夜
蔵前のマクドナルドから
上を向いて有馬温泉を歩
つながっている向こうの場所で
敦賀の砂浜で寝転ぶ
家から5分の旅館に泊まる
煙突の先の煙を眺めた日
Ⅱ こういう時間がたまにあってそれに支えられて生きている
犬鳴山のお利口な犬と猫
暑い尾道で魚の骨をしゃぶる
湖の向こうに稲光を見た
枝豆とミニトマトと中華そばと
あのとき、できなかったこと
いきなり現れた白い砂浜
Ⅲ こんなに居心地のいい店がなくなってしまう未来
予備校の先まで歩くときがくる
〝同行二人〟を思いながら野川を歩く
米子、怠惰への讃歌
生きなきゃいけない熊本
和歌山と姫路、近いけど知らないことばかりの町
幸福な四ツ手網小屋と眠れない私
Ⅳ 未来の自分が乗った飛行機が残していく雲を今の自分が見上げている
熱海 夜の先の温泉玉子
今日もどこかでクソ面倒な仕事を
海を渡って刺し盛りを食べる
城崎温泉の帰りに読んだ『城の崎にて』
寝過ごした友人がたどり着いた野洲駅へ泊りに行く
秩父で同じ鳥に会う
あとがき