


著:笠間直穂子 版元:河出書房新社 P224 四六判ソフトカバー 2024年11月刊
武甲山の山影に沈む秩父の町の「暗さ」、そのコントラストの強さを、過不足なく書ききる筆致に凄みを感じた。ただ美しいだけではない、時に迫ってくるような自然の近くで暮らしながら生まれた、清冽な言葉。
【内容】 *出版社ウェブサイトより
アスファルトの世界を離れ、わたしは秩父へ移り住むことにした――庭と植物、自然と文学が絡み合う土地で、真摯に生きるための「ことば」を探す。練達の仏文学者による清冽なエッセイ集。
・窓から風に乗って流れ込んだ常山木の、爽やかで甘い濃厚な匂いに導かれて(「常山木」)。
・生命の表と裏を引き受ける誠実さの方へ(「巣箱の内外」)。
・経済活動からはこぼれ落ちる、豊かな交換の倫理(「ふきのとう」)。
・外来種という呼称がはらむ排外主義の芽と、植物がみせる「明日の風景」(「葛を探す」)。
・宮沢賢治が見上げた秩父の空(「野ばら、川岸、青空」)。
・鮮やかで深い青紫の花と、家の記憶について(「サルビア・ガラニチカ」)。
・切り捨てられた人間と動物がともにある世界へ(「車輪の下」)。
・都市優位の世界観を解きほぐす作家たち(「田園へ」)。
・見知らぬ女性からの言葉が届く場所で、わたしは届くはずのない文章を待っている(「消される声」)。
・空の無限、星の振動、微かに吹く風は、わたしたちに語りかける(「風の音」)。
……ほか珠玉のエッセイ、三十篇